家づくりの相談を受けていて、いちばん多く聞かれるのがこの質問です。
「モデルハウスに行くとき、何を聞けばいいんでしょうか」

はじめまして。
新潟市西区で住宅ライターとインテリアコーディネーターをしている佐久間詩織と申します。

建築系の専門学校を出たあと、市内の工務店で設計補助を5年。
そのあと県内の住宅情報誌の編集部に10年いました。
取材でお邪魔した家は400軒を超えます。
2020年に独立して、いまは書く仕事と、間取りや素材選びの相談を半々でやっています。

冒頭の質問に、私はいつも少しずらした答え方をします。
聞くべきことのリストなら、検索すればいくらでも出てきます。
本当に困るのは、聞いたあとなんです。

返ってきた答えが良い答えなのか、それらしいだけの答えなのか。
その判断がつかないまま「感じのいい人だったね」で終わってしまう。
そういう見学を、私は何度も横で見てきました。

この記事では、質問そのものよりも「返ってきた答えをどう読むか」を軸に書きます。
あわせて、新潟で建てるなら外せない質問と、その場で決めてしまわないための確認事項もまとめました。

モデルハウスは家を選ぶ場所ではなく、会社を選ぶ場所です

国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査によると、注文住宅を建てた世帯が施工者を探した方法の第1位は住宅展示場で50.8%でした。
インターネットは46.6%です。
情報がこれだけネットに移っても、展示場を入り口にする人は半数を超えています。

同じ調査で興味深いのは、住宅を選んだ理由のほうです。
1位は「信頼できる住宅メーカー/不動産業者だったから」で55.3%。
「価格/家賃が適切だったから」は20.8%にとどまります。

注文住宅は、価格ではなく信頼で決まっている。
そして、その信頼を測る場所が展示場になっている。

ところが多くの方は、展示場へ「家を見に」行きます。
ここに小さなズレがあります。

モデルハウスの仕様は、その会社の最上位グレードです。
住宅会社自身が公開しているコラムにも、展示場の建物は設備が最高グレードで、その多くは標準装備ではないとはっきり書かれています。
広さも、商談スペースを確保する都合で実際に建てる家より大きいことが多い。

見学して惚れ込んだ質感が、そのまま自分の予算で手に入るとは限らないわけです。
だとすれば、設備の品定めに2時間使うより、目の前にいる人と、その人の後ろにいる会社を測るほうに時間を使ったほうがいい。
これが私の立場です。

答えの中身より、答え方を見てください

同じ質問をぶつけても、返し方は会社によってまるで違います。
私が見ているのは次の3点です。

  • 数字で返ってくるか、印象で返ってくるか
  • 分からないときに「分かりません、確認します」と言えるか
  • 口で言ったことを、紙で見せてもらえるか

数字で返ってくるか、印象で返ってくるか

「この家は暖かいですか」と聞いて、「もう全然違いますよ、冬でもTシャツで過ごせます」と返ってきたら、それは体感の話です。
悪い答えではありませんが、比較には使えません。

同じ質問に「UA値が0.4を切っていて、暖房負荷の計算だとこのくらいです」と返す会社もあります。
数字が出てくるかどうかで、その会社が性能を設計しているのか、結果として性能が付いてきているのかが見えます。

「分かりません」と言えるか

これは逆説的なのですが、私がいちばん安心するのは、その場で答えられなかったときの対応です。

営業担当は、構造計算も気密測定も自分の手ではやっていません。
だから即答できないことがあって当然なんです。
問題は、曖昧なまま雰囲気で埋めてしまうかどうか。

「確認して、いつまでにご連絡します」と言える人は、契約後の打ち合わせでも同じ振る舞いをします。
逆に、何を聞いても淀みなく答えが返ってくる場合は、一度深く踏み込んでみてください。

紙で見せてもらえるか

口頭のやりとりは、半年後には必ず「言った、聞いていない」になります。
質問を、資料の請求に言い換えてしまうのがいちばん確実です。

口で聞くと曖昧になること言い換えて頼むこと
標準仕様はどこまでですか標準仕様の一覧表をください
気密は高いですか直近の気密測定の報告書を見せてください
耐震等級3です建設住宅性能評価書のサンプルを見せてください
保証は長いです保証書の実物と、延長の条件が書かれた書面をください
だいたい坪〇〇万円です総額の内訳が分かる資金計画書をください

その場で出てこなくても構いません。
次に会うときに揃っているかどうかが、そのまま会社の体力を映します。

新潟で建てるなら、この3つは外せません

全国向けの記事には、まず出てこない質問です。
けれど新潟で建てるなら、間取りやキッチンより先に確認してほしい。

この敷地の垂直積雪量は何センチで設計しますか

建物の屋根がどれだけの雪を想定して設計されているかは、自治体が数字で定めています。
新潟市の場合、市の細則で区域ごとの垂直積雪量が決められていて、同じ市内でも数字が違います。

区域垂直積雪量
中央区・東区・西区の全域100cm
江南区・北区の一部を除く区域120cm
秋葉区(小須戸・矢代田ほかを除く区域)130cm
西蒲区のうち岩室温泉・中之口ほかの区域110cm

積雪の単位重量は1cmあたり1平方メートルにつき30ニュートン以上と定められています。
くわしい区域の一覧は新潟市の積雪荷重・凍結深度についてのページで確認できます。

中央区の100cmと秋葉区の130cmでは、屋根が背負う荷重が3割違います。
「新潟だから雪には強いですよ」で流されそうになったら、この数字を聞いてください。

雪下ろしを前提にした低減をかけていますか

これは、あまり知られていない話です。

新潟県の運用基準では、雪下ろしや融雪装置を前提として、設計上の積雪量を減らして計算することが認められています。
つまり、雪下ろしをする前提で構造計算されている家がある、ということです。

設計上は問題ありません。
ただ、住み始めてから雪下ろしが事実上の義務になります。
70代になった自分が屋根に上がる姿を想像できるかどうか、そこは契約前に確かめておく話です。

太陽光パネルを載せる予定があるなら、その荷重を含めて再計算しているかも一緒に聞いてください。

冬に日が差さない前提で、暖房を考えていますか

気象庁の平年値(1991〜2020年、新潟地点)を見ると、新潟の1月の日照時間は月合計で56.4時間です。
1日あたり2時間に届きません。
12月が62.9時間、2月が74.3時間。
雪が降った日は年間で90.5日あります。

数字は気象庁の新潟の平年値ページで誰でも確認できます。

「南向きの大きな窓で日射を取り込んで暖かく」という説明は、太平洋側では成立します。
新潟の冬にそのまま持ち込むと、日射で得るものより、窓から逃げるものが上回ることがあります。

だから聞き方はこうなります。
「冬の日射がほとんど期待できない条件で、この間取りの暖房負荷はどう計算していますか」

答えられる会社と、答えられない会社が、きれいに分かれます。

性能の質問は、等級ではなく実測と証明書で聞く

2025年4月から、原則としてすべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務づけられました。
ただし義務化されたのは断熱等性能等級でいう等級4の水準であって、ZEH水準の等級5ではありません。
ここは誤解が多いところです。

新潟市は国の省エネ基準でいう5地域にあたります。
5地域の場合、UA値の基準は等級4で0.87、等級5で0.6、等級6で0.46、等級7で0.26。
長岡市や魚沼市の一部は4地域なので、同じ等級でも要求される数字が違います。

聞くべきは「うちの敷地は何地域で、御社の標準仕様のUA値はいくつですか」です。

気密については、事情が少し変わります。
現在の法令に、C値の基準はありません。
住宅性能表示制度の評価項目にも気密は含まれていないので、測っても測らなくても違法ではないのです。

だからこそ、聞かないと分かりません。

  • 気密測定はしていますか。全棟ですか、抜き取りですか
  • 保証値ですか、目標値ですか
  • 測るのは中間ですか、完成時ですか

「うちは全棟測って、報告書をお渡ししています」と即答できる会社は、それだけで一つの判断材料になります。

耐震等級も同じです。
住宅性能評価・表示協会の説明によれば、耐震等級2は等級1の1.25倍、等級3は1.5倍の地震力に耐える設計を指します。
ただ、展示場で聞く「等級3です」には、第三者機関の評価書を取得するものと、自社基準で等級3相当としているものが混ざっています。

「建設住宅性能評価書は発行されますか」「許容応力度計算ですか」
この2つを聞けば、区別がつきます。

その場で判断しないための、お金と契約の質問

見学の高揚感は、思っている以上に判断を鈍らせます。
そして、ここが盲点なのですが、展示場での契約は原則としてクーリング・オフの対象外です。

クーリング・オフが使えるのは、特定商取引法でいう訪問販売、つまり営業所等以外の場所で結んだ契約です。
常設の住宅展示場やモデルハウスは、消費者庁の通達でいう「営業所等」にあたると整理されるため、そこで結んだ契約は原則として8日間の解除の対象になりません。
制度の考え方は消費者庁の特定商取引法ガイド 訪問販売のページにまとめられています。

個別の事情によって判断が変わる余地はありますが、「今日申し込めば」に応じる理由がないことは確かです。

契約書の中身についても、建設業法第19条が記載すべき事項を16項目定めています。
高価格帯の家でとくに揉めるのは次の2つです。

  • 設計変更や工事中止があった場合の、工期と請負代金の変更方法とその算定方法
  • 資材価格が変動したときの、請負代金の変更方法とその算定方法

打ち合わせが進むほど仕様は動きます。
そのとき金額がどう決まるのかを、契約書のどこに書いてあるか。
見学の段階で「変更が出たときの精算ルールを教えてください」と一度聞いておくと、相手の誠実さがよく分かります。

見学のあと、営業されるのが怖い方へ

そもそも展示場に足が向かない理由の大半は、これだと思っています。
アンケートを書いたら電話が鳴り続けるのではないか、という不安です。

私の見てきた範囲では、しつこい連絡の多くは相手の性格ではなく、他社で決まってしまうことへの恐れから来ています。
だから、最初に見通しを伝えてしまうのがいちばん効きます。

「複数社をじっくり比較したいので、こちらから連絡するまでは電話や訪問は控えていただけますか」

この一文を最初に伝えて態度が変わる会社なら、それも情報です。
偽名や嘘の住所を書くより、正直に書いて断るほうが、結果として気持ちよく終わります。

見学前の準備としては、自分が何に反応するのかを知っておくことをおすすめします。
私は打ち合わせの前に、新潟のハイエンドな住宅やインテリアを実例で記録しているブログのような、地元の物件を追いかけている記録に目を通しておくようにしています。
好みの言語化ができていると、当日の質問がぐっと具体的になります。

もし契約後や引き渡し後に不安が出たときは、公的な相談先があります。
国土交通大臣が指定した住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)では、建築士の資格を持つ相談員が電話で対応しています。

同センターの住宅相談統計年報2025によれば、2024年度の新築に関する相談は11,682件。
そのうち住宅のトラブルに関する相談では、74.6%で実際に雨漏りやひび割れなどの不具合が生じていました。
決して他人事の数字ではありません。

まとめ

モデルハウス見学で持ち帰るべきものは、設備のカタログではなく、その会社を測った結果です。

最後に、この記事の要点を並べておきます。

  • 展示場は家を選ぶ場ではなく、会社と担当者を選ぶ場と考える
  • 質問の答えは、中身より「数字で返るか」「分からないと言えるか」「紙で出せるか」で読む
  • 新潟では垂直積雪量、雪下ろし前提の低減、冬の日射条件の3つを必ず聞く
  • 性能は等級の言葉ではなく、実測値と第三者の評価書で確認する
  • 展示場での契約は原則クーリング・オフできない。その場で判断しない

全部を1日で聞く必要はありません。
1棟目で聞けなかったことを、2棟目で聞けばいい。
質問を重ねるうちに、自分が家に何を求めているのかも輪郭が出てきます。

家づくりは、長い付き合いの始まりです。
最初の1時間を、相手を知る時間に使ってください。

最終更新日 2026年8月27日 by seifuu